前回は、Static Routingの全体像として「管理者が手動で経路を設定する」という基本的な考え方や、Default Route、Host Route、Floating Static などの種類を整理しました。今回はその続きとして、Static Routeをどのように指定するのか、そしてルータが経路をどう採用し、どう転送先を選ぶのかを整理していきます。
next-hop とは何か
next-hop とは、パケットを目的地へ近づけるために、次に渡す相手のIPアドレスのことです。
Static Routeでは「この宛先へ行きたいなら、次はこの相手に渡してください」と手動で指定します。つまり、宛先ネットワークそのものだけでなく、どの隣接ルータへ渡すかも管理者が決めるのが基本です。
たとえば図では、R1からR2へ渡す next-hop の例として 192.168.12.2 が示されています。こうした指定によって、ルータはどこへパケットを送るべきかを判断します。
exit interface とは何か
exit interface とは、パケットを外へ送り出す送信インターフェースのことです。
こちらは「次に誰へ渡すか」ではなく、「どの出口から出すか」を指定する考え方です。たとえば GigabitEthernet0/1 のように、送信に使うインターフェース名を指定します。
Static Routeは、
next-hop を指定する方法
と
exit interface を指定する方法
の両方があり、状況によって考え方が少し変わります。
next-hop 指定と exit interface 指定の使い分け
この使い分けは、接続しているネットワークの性質で考えるとわかりやすいです。
Serial系のような Point-to-Point 接続では、相手がほぼ1台に限定されるため、exit interface 指定でもイメージしやすく、設定も理解しやすいです。
一方で、Ethernet系は multi-access で、同じセグメントに複数の相手が存在し得ます。そのため、基本的には next-hop 指定 で「誰に渡すか」を明確にする考え方が重要になります。
特にEthernetで出口だけ指定すると、宛先ごとにARP解決が増えやすくなる点が注意点です。Ciscoの解説でも、直接接続されたマルチアクセス環境で next-hop ではなく exit interface のみを指定すると、宛先ごとのARP解決が発生しやすくなることが説明されています。

Administrative Distance(AD)とは何か

Administrative Distance、略して AD は、ルータが複数の経路情報源を見たときに、どれをどれだけ信頼するかを数値で表したものです。
数値が小さいほど信頼度が高く、採用されやすくなります。重要なのは、ADは「経路を採用する段階」で使われるという点です。
今回の図では、代表例として次の値が整理されています。
- Static Route:1
- BGP:20
- EIGRP:90
- OSPF:110
- RIP:120
Longest Prefix Match とは何か
Longest Prefix Match とは、実際にパケットを転送するとき、宛先IPアドレスに最も具体的に一致する経路を選ぶルールです。
ここがADと混同しやすいポイントですが、役割は違います。
ADは採用の段階、
Longest Prefix Matchは転送の段階
です。
たとえば、10.0.0.0/8 と 10.1.1.0/24 の両方がある状態で、宛先が 10.1.1.50 だった場合、より具体的な /24 の経路が選ばれます。つまり、ルーティングテーブルに載っている候補の中から、いちばん細かく一致する道を選ぶ考え方です。
Floating Static との関係
Floating Static は、普段は使わず、主経路が消えたときだけ使われるバックアップ用のStatic Routeです。
通常の Static Route の既定ADは 1 ですが、Floating Static ではあえてそれより大きいADを設定します。そうすることで、普段は主経路が採用され、主経路がなくなったときだけバックアップ経路が有効になります。
基本設定イメージ
Static Routeの基本設定は、考え方としてはとてもシンプルです。
必要なのは主に次の4つです。
まず 宛先ネットワーク を決め、
次に マスク を指定し、
そのあと next-hop か exit interface を書き、
必要があれば AD を追加します。
つまり、Static Routeは
「どこへ行く通信か」
「誰に渡すか、またはどこから出すか」
を人が決める仕組みだと考えると整理しやすいです。
確認コマンドの見方
設定後の確認では、まず show ip route を見る癖を付けると理解しやすいです。
確認するときは、単に「経路があるか」だけでなく、次の視点で見ると整理しやすくなります。
1つ目は、どのプレフィックスが載っているか。
2つ目は、next-hop は誰か。
3つ目は、Default Route はあるか。
4つ目は、どの経路が実際に採用されているか です。
また、Default Route は 0.0.0.0/0 で表され、宛先に一致する具体的な経路が見つからないときの「最後の出口」として使われます。
まとめ
今回のポイントは、Static Routeの理解を一段深めるために、next-hop と exit interface の違い、AD と Longest Prefix Match の役割の違いを切り分けて考えることです。
next-hop は次に渡す相手、exit interface は出していく出口です。AD はどの経路を採用するかの判断材料で、Longest Prefix Match は採用済み経路の中から実際の転送先を選ぶルールです。さらに、Floating Static はADを高くすることで、障害時だけ使われるバックアップ経路として機能します。
このあたりを整理できると、Static Routingは単なる「手動設定」ではなく、ルータがどう判断しているかを理解する学習につながっていくと思います。


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