先日は「新入社員時代の3つの教え」について書きましたが、今回はその頃の話に少し関連して、電話応対について書いてみたいと思います。
新入社員として入社すると、研修を終えたあとにさまざまな部署へ配属されると思いますが、その中で最初に任される仕事のひとつが、電話対応ではないでしょうか。
私も新人時代に電話を取る仕事を経験しましたが、正直に言うと、あれがとても苦手でした。
いや、苦手というより、むしろ大嫌いだったと言ったほうが近いかもしれません。
でも今振り返ると、その「嫌でたまらなかった経験」が、あとになって思わぬ形で役に立っていたのです。
今回はそんな話を書いてみたいと思います。
新人時代、とにかく電話を取るのが嫌だった
私が最初に働いたのは、某ホビーショップでした。
そこには本当にひんぱんに電話がかかってきていました。
社内の人からの電話、取引先からの電話、お客様からのお問い合わせ。
今ほどインターネットで何でも調べられる時代ではなかったので、お店の場所や営業時間、商品の在庫確認、時にはクレームまで、いろいろな電話が入ってきます。
社内の人からの電話ならまだ少し気が楽でしたが、取引先やお客様からの電話となると、一気に緊張してしまい、うまく話せませんでした。
先輩からは、
「電話は3コール以内に取ること」
「いつもの2倍増しくらい元気に話すこと」
と教えられていましたが、頭ではわかっていても、実際にはなかなか思うようにできません。
毎回そんな調子だったので、だんだん電話を取ること自体が嫌になっていきました。

電話をかけるのもまた苦手だった
その後に転職したクレジットカード会社では、今度は自分から電話をかける場面もありました。
しかも相手は銀行の副支店長。
内容としては、訪問日程の確認など決して難しい話ではなかったのですが、とにかく緊張したのを覚えています。
緊張すると、どうしても早口になります。
声も上ずってしまうし、自分が何を話しているのか途中でわからなくなることもありました。
電話を終えるたびにほっとするのですが、同時にどっと疲れが出る。
受けるのも嫌、かけるのも嫌。
当時の私は、電話応対に対してかなり強い苦手意識を持っていました。
生活のために始めたダブルワーク
当時、昼間の仕事は派遣社員だったため、それほど収入が高くなく、生活は決して楽ではありませんでした。
そこで私は、ダブルワークを始めることにしました。
日中の仕事は8時45分から17時15分まで。
そのあとにできる仕事としては、居酒屋、コンビニ、コールセンターなどいくつか候補がありました。
その中でコールセンターは、当時としてはかなり時給が高く、1,400円ほどでした。
しかも昼間働いたあとに入る仕事なので、できるだけ体力を消耗しにくい仕事のほうがよかった。
そう考えて、私は居酒屋やコンビニではなく、コールセンターを選びました。
今思えば、電話が苦手だった私が、よくその仕事を選んだものだと思います。
私が入ったのは「無人受付機のガイドホン」受電だった
ひとくちにコールセンターといっても、実はいろいろな種類があります。
お客様から電話がかかってくる受電、こちらから電話をかける架電、あるいはその両方。
さらに、業界によって仕事内容もまったく違います。
そんな中で、私が始めたのは、消費者金融の無人受付機に設置されたガイドホンの受電業務でした。
ガイドホンというのは、銀行やATMコーナーなどで見かける備え付けの電話のようなもので、
操作方法がわからないときや、紙幣が詰まったとき、機械に不具合が起きたときなどに使われるものです。
最初は「電話を取るだけの仕事かな」と思っていましたが、実際にはそんなに甘いものではありませんでした。
想像以上に厳しかった研修と訓練
私が勤めたコールセンターでは、とにかく研修と訓練が徹底していました。
まずは知識を身につけるための座学。
そのあとに、実際の電話機を使ったOJT。
確か3か月ほどは、研修と訓練が続いたと思います。
しかも、研修を終えればすぐ現場に出られるわけではありません。
最後には試験があり、それをパスしないとデビューできない仕組みになっていました。
先輩社員がお客様役になり、こちらがそれに応対する。
話し方や受け答えに間違いがあれば、電話が終わったあとに細かく指摘される。
その繰り返しです。
当時は正直、「ここまでやるのか」と思いました。
でも今振り返ると、あの徹底した訓練があったからこそ、電話応対の土台ができたのだと思います。

デビュー後は、さらに試練の連続だった
そして、研修を終えて実際に現場に出ると、そこにはさらに厳しい現実が待っていました。
無人受付機のガイドホンには、操作方法の問い合わせだけでなく、クレームの電話も多くかかってきます。
たとえば、
「お金を借りに来たのに、紙幣が詰まって借りられない!」
というようなケースです。
当然、お客様はご立腹です。
電話に出た瞬間から怒鳴り声、ということもありました。
こちらは端末上である程度、現地の機械の状態を把握できるので、ある程度どういう電話が来るか想定はできます。
それでも、いきなり怒鳴られると、やはり委縮します。
電話が苦手だった私にとっては、なかなか過酷な環境でした。
それでも続けたことで、少しずつ変わっていった
そんなクレーム対応もありつつ、私はお金のためにその仕事を1年半ほど続けました。
最初の頃は、本当にあたふたしながら対応していました。
言葉に詰まり、緊張し、相手の勢いに飲まれてしまうこともありました。
でも、回数を重ねるごとに少しずつ変わっていきました。
落ち着いて話せるようになった。
相手の言葉を聞きながら、必要な情報を整理できるようになった。
多少強い口調の電話でも、以前ほど動じなくなった。
もちろん、不安が完全になくなったわけではありません。
それでも、以前のように「電話そのものが怖い」という感覚は、だんだん薄れていきました。
むしろ後半になると、クレーム電話がかかってきたときに、
「さて、どうすれば穏便に収束できるか」
と考える余裕まで少しずつ出てきました。
今思えば、あれはゲーム感覚に近い面白さだったのかもしれません。
相手の感情を受け止めながら、こちらは冷静さを保ち、着地点を探っていく。
その感覚は、後の仕事にもずいぶん生きることになりました。
コールセンターでの経験は、その後ずっと役に立った
コールセンターの仕事を辞めたあとも、私はいろいろな仕事を経験してきました。
印刷会社の営業、カレー屋のホールスタッフ、通信会社のオペレーターなど、仕事の内容はさまざまでしたが、どの職場にも電話対応はありました。
時代が変わって固定電話は減ってきましたが、今でも会社支給のスマートフォンに電話がかかってきたり、こちらから電話をかけたりすることはあります。
そして、そのたびに思うのです。
コールセンターで鍛えられた経験は、やはり無駄ではなかったと。
落ち着いて話すこと。
声のトーンやスピードを意識すること。
的確な言葉遣いで、必要なことをわかりやすく伝えること。
そうしたことは、今でも仕事の中で生きています。
実際に職場の人から、
「電話対応すごいですね」
「いい声していますね」
と言っていただくこともあり、自分でも昔の自分からすると驚くことがあります。
あれほど電話が嫌いだったのに、です。

私が身につけた「電話応対の極意」
ここで、私自身がこれまでの経験を通して身につけた、電話応対の基本をいくつか書いてみたいと思います。
もちろん、これを意識したからといって、すぐに電話応対が完璧になるわけではありません。
ただ、少し意識を変えるだけでも、今より落ち着いて、伝わりやすい対応に近づけると思います。
1. 声の大きさは、普段の会話の1.5倍から2倍くらいを意識する
電話では相手の顔が見えません。
その分、声が相手に与える印象はとても大きくなります。
少しはっきりめに、元気のある声で話すだけで、相手に与える印象はかなり変わります。
「感じがいいな」「ちゃんと対応してくれそうだな」と思ってもらえることもあります。
もちろん、内容によってトーンの調整は必要です。
たとえば、お詫びや深刻な内容のときに明るすぎる話し方をしてしまうと、逆効果になることもあります。
大切なのは、聞き取りやすく、内容に合った声で話すことだと思います。
2. 話すスピードは、少しゆっくりめがちょうどいい
電話になると、緊張のせいで早口になってしまう人は多いと思います。
私自身もそうでした。
でも、電話は声だけで情報を伝えるので、早口になると聞き取りづらくなり、誤解のもとにもなります。
自分では少しゆっくりすぎるかな、と思うくらいで話すと、結果的にちょうどいいことが多いです。
相手にも落ち着いた印象を与えられますし、自分自身も慌てにくくなります。
3. 言葉遣いは「丁寧そう」ではなく「正しく丁寧」にする
電話対応では、言葉遣いもとても大切です。
よく言われる「ファミコン言葉」のように、丁寧そうに聞こえて実は不自然な表現は、できるだけ避けたほうがよいと思います。
たとえば、
- 「1万円からお預かりします」ではなく、「1万円お預かりいたします」
- 「お見積りのほう作成します」ではなく、「お見積りを作成します」
- 「ご注文は以上でよろしかったでしょうか?」ではなく、「ご注文は以上でよろしいでしょうか?」
といった具合です。
ほんの少しの違いですが、こうした言葉遣いは相手に与える印象を大きく左右します。
だからこそ、日頃から意識しておくことが大切だと思います。
4. 数字は特に慎重に伝える
電話対応の中でも、特に気をつけたいのが数字です。
日にち、時間、金額、電話番号。
数字の伝達ミスは、そのままトラブルやクレームにつながることがあります。
そのため、聞き間違いを防ぐ言い方を意識するのはとても大事です。
たとえば、
- 4は「し」ではなく**「よん」**
- 7は「しち」ではなく**「なな」**
のように、聞き取りやすい言い方を選ぶだけでも、間違いはかなり防げます。
必要であれば、復唱する。
相手に確認してもらう。
このひと手間が、結果的に大きなミスを防ぐことにつながります。
5. 電話は、相手が切ったのを確認してから切る
最後に、意外と大切なのが電話の切り方です。
会話が終わったあと、こちらが先に切ってしまうと、場合によっては少しぶっきらぼうな印象を与えることがあります。
そのため、基本的には相手が切ったのを確認してから、こちらも切るほうが安心です。
小さなことですが、こうした最後の印象は意外と残るものです。
電話応対は、話し始めだけでなく、終わり方まで含めて対応だと私は思っています。
おわりに
電話対応は、仕事の中では地味に見えるかもしれません。
でも実際には、相手との信頼関係や、会社全体の印象にもつながる、大切な業務のひとつだと思っています。
そして何より、私自身の経験から言えるのは、どんな経験も無駄ではないということです。
あの頃の私は、電話が本当に嫌いでした。
できることなら取りたくないし、できることならかけたくもなかった。
それでも生活のために選んだ仕事の中で、厳しく鍛えられ、何とか続けてきた経験が、
今になって振り返ると、自分の大きな土台のひとつになっています。
そのときは嫌だったことも、遠回りに見えたことも、あとで思わぬ形で自分を助けてくれる。
そういうことは、人生の中で意外と多いのかもしれません。
もし今、電話対応が苦手で悩んでいる方がいたら、最初はうまくできなくて当たり前です。
少しずつ経験を重ねるうちに、必ず慣れていきます。
そしていつか、
「あの経験は無駄じゃなかったな」
と思える日が来るかもしれません。

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